都内の満蒙開拓慰霊碑をめぐるー多摩市「拓魂碑」
2023年4月9日訪問
「ヒロシマ講座」都内の満蒙開拓慰霊碑をめぐるシリーズ
多摩市の拓魂公苑で開かれた満蒙開拓の慰霊の集いに行ってきました。
内容についての責任は全て当サイト管理人にあります。
拓魂公苑 google mapでこの辺
都立桜ヶ岡公園内にあります。
満洲開拓殉難者之碑建設の由来
この碑は、満蒙の荒野に無残に散った八万の開拓者と、その人々を守りつつ自らも逝った関係者多数の御霊が合祀してあります
昭和七年(一九三二年)はじめられた、満洲の開拓事業は、満蒙の天地に、世界に比類なき民族協和の平和村建設と、祖国の防衛という高い日本民族の理想を実現するために、重大国策として、時の政府により行われたものであります
凍土をおこし、黒土を耕し、三十万の開拓農民は、日夜、祖国の運命を想いながら黙々と開拓の鍬を振るいました。然し、その理想の達せられんとした昭和二十年の夏、思わざる祖国の敗戦により、地と汗の建設は一瞬にして崩れ去り、八万余の拓士と関係者は、満蒙の夏草の中に露と消えていきました
そして、そこには未だ一輪の花も供えられたことはないのです
ここに同志相図り、水漬きこの多摩川の丘に一碑を建てて祖国と民族のために、雄々しく不屈の開拓を闘い抜き、そして散っていった亡きこれらの人々の御霊をお祀りすると共に、再びかかる悲しみのおこることなき世界の平和の実現を心からお祈りせんとするものです
昭和三十八年八月
建設委員長 安井 謙
上掲の由来文にもあるように、非業に斃れた満洲開拓犠牲者の御霊を祀るべく、関係者相図り、昭和三十二年に国や全国都道府県の強力なご支援と、内閣総理大臣や各国務大臣を歴任された方々など多くの有識者のご理解とご協力のもと、満洲開拓殉難者之碑建設委員会(委員長安井誠一郎東京都知事)が発足し、その後、跡を継いだ実弟の安井謙氏(後の参議院議長)を筆頭とする建設委員会各位の並々ならぬご尽力によって、同三十八年ようやく満洲開拓に所縁のある景勝の地、ここ聖蹟桜ヶ丘の一角を選定して土地を取得し、その中央に拓魂碑を建立、同年八月十日に除幕式が執り行われました。
さらにその後、碑の周囲を取り巻くように、関係者それぞれが在満当時所属していた開拓団ごとの団碑の建立も逐次行われ、その総数百七十三基を数えるに至り、現在見られるような拓魂公苑に整備されました。
爾来三十有余年、全国拓友協会と拓魂碑奉賛会の共催のもとに、桜花爛漫の四月第二日曜日を「拓魂祭」の例祭日と定め、毎年毎年全国津々浦々から集い来る老若男女の数はたとえ荒天風雨の日となるも一〇〇〇名を下ることはなく、各々がこの拓魂碑および各団碑の前にぬかずき、香を焚き花を捧げ、在りし日の肉親縁者や同志を偲ぶ慰霊の行事を続けて今日に至りました。
いま、私ども満洲開拓関係者の最大の悲願は、この公苑と拓魂碑等の永久護持にありますが、そのための方途として、この度理解ある関係各位のご尽力と、東京都知事のご英断により、これらを都有施設としてお引き受け戴くとともに、爾後の維持管理をもお願いすることになりました。
それに伴い、ここに全国拓友協会の所有にかかる公苑敷地一六二一㎡及び樹木、拓魂碑、団碑等の一切を東京都に寄付することと致しました。
拓魂よ永遠なれと念じつつ。平成十三年一月吉日
社団法人 全国拓友協会 会長・戸谷義次
ちなみに平成13年(2001)の東京都知事は石原慎太郎です。
一番中心的な位置にあるのが、加藤完治書の「拓魂」碑
そして周囲をぐるっと囲うのが170本の慰霊碑
碑文にあるように元々は拓魂祭として開かれていたそうですが、主催していた全国拓友協会が解散し、体験者の高齢化やコロナなどもあって、今は有志が集まっている形なんだそうです。
今回の集いでは元開拓団員である広島の末広一郎さん(97歳)が
立ち並ぶ碑を指して「こんなことが許されますか?」
「満洲で中国の人の土地を二束三文で買い取って百姓したことを開拓とは言わない」
「我々は反省しないといけない」
と語られました。
冒頭の碑文とは対照的ですね。
元々そこに住んでいた人がいた、ということは忘れちゃいけないと思います。
毎日新聞の記事になってました。
(有料記事ですが、無料の範囲で末広さんの写真は見られます)
毎日新聞2023年4月10日「戦争はいけない」 満蒙開拓伝える、広島の末広さん(97) 4年ぶりの上京 多摩・拓魂公苑で追悼 /東京
それと2021年の慰霊祭がNHKの取材を受けてたようで、リポートを見ることができます。
NHK首都圏ナビWebリポート2021年5月31日「東京から満州開拓に 知られざる歴史 慰霊祭をオンラインで伝える」
更新履歴
2023年5月8日 新規作成
2023年5月9日 誤記修正
2023年6月6日 文責追記
2024年1月2日 移行に伴う見た目調整
2024年1月5日 訪問日追記