長崎訪問
2014年08月09日
■被爆者代表から要望を聞く会
5名の被爆者代表からの要望を聞く会がおこなわれました。
政府インターネットテレビではその一部だけしか見ることができませんが、
その映像から読み取れる部分から特に集団的自衛権に関連するようなところをまず引用します。
会の最初に要望書の趣旨を正林氏が説明しました。ここは全て引用します。
「今日は総理ありがとうございました。みなさんありがとうございます。
総理とは7年前の2007年8月9日もですね、私は平和の誓い、総理はご挨拶で、そして核の無い平和を誓い合いました。それから相次いで、オバマ大統領がプラハの誓いをなさいました。私たちはお二人に尊敬の念を捧げてお二人の真理への勇気を歓迎しました。○○(?)ドラマのタイトルが浮かんできます。帰ってきてください。オバマ米大統領にはプラハに帰れ、安倍総理には憲法9条に帰れ、念を込め、お願いしながら私たちはラブコールを送っております。その1つ、私たちは安倍総理宛に先日、被爆者団体の強い決意を持って、集団的自衛権行使容認に反対しますと、抗議とお願いの、切なる、切々なる、文書を送っております。
ところで、昨年と同じですか、あの、広島のコメントが同じだったということで、総理の。長崎も総理のお誓い、決意は去年と同じだったんでしょうかね。ちょっと私も、ちょっと、がっかりっていうか、びっくりして、被爆者みんながびっくりした状態でおります。
さて、私たち被爆者、これまで核廃絶、世界平和、原爆の被害への国の償い等を訴え続けてきましたが、高齢化し、残された生存の時間、生ける時間もあとわずかです。その私たちが申し上げる要望はお手元に差し上げております要望書の通りで、原爆症認定のあり方や、被ばく地域設定の問題、被爆者医療の充実や高齢化する被爆者の援護、福島原発事故に関する問題など、いずれも急を要する重要な内容でございます。あの非人道的な原爆の惨禍にさらされ、苦しみ続けて今年で69年です。どうか、被ばく70周年の年を越さずに被爆者の思いをお汲み取りいただければ、私たちは幸いでございます。
ところで総理、○○(急ぐ?)政治にお願いがあります。集団的自衛権より、まず先に、国民や東アジア、世界の為に急がねばならないことが山ほどあります。日本を取り巻く安全保障環境の変化もあります。しかし、その変化を、変化させるように力を尽くすべきではありませんか?あの日の猛省、誓い、今もなお日本の安定を支える平和憲法。これからも集団的自衛権ではなくて、その平和憲法こそ私たち国民の、総理がおっしゃっております、安全、安心、命、暮らしの要です。政府の緊張緩和への確かな取り組みさえあれば、火に油を注ぐような集団的自衛権はいりません。不要です。軍歌が鳴り響く○○(不測?)の戦争や、復讐報復の繰り返しから、戦術核の使用も懸念されます。心配でなりません。取り返しのつかない恐怖の環境にならないように、私たち被爆者は集団的自衛権行使容認に絶対反対いたします。
以上、ご英断を求め、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。」
この聞く会の最後に安倍首相が締めくくりの挨拶をしています。
今日はそれぞれ率直なご意見をいただいたと思います。ご要望いただいた項目につきましては、両大臣からお答えをさせていただきましたが、政府として基本的な考え方について私の方からお話をさせていただきたいと思います。
この要望書の中にございます、この、核兵器廃絶そして非核三原則についてでございますが、唯一の戦争被爆国である我が国としては核兵器の惨禍が再び繰り返されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた努力を続けていく考え、これはまぁ不変の考えでありまして、そのことをお誓い申し上げる次第でございます。
昨年は私自身、国連総会に参りまして、核軍縮ハイレベル会合に出席をいたしました。核兵器廃絶に向けて国際社会の先頭に立つという強い決意を表明したところでございます。また、包括的核実験禁止条約の早期発効に向けまして、関係国の首脳にも条約の批准を直接働きかけてまいりました。現実的かつ実践的な核軍縮を進めているところであります。被ばくから70年目の節目である来年は5年ぶりにNPT運用検討会議が開催されます。本年4月に我が国で採択された「軍縮・不拡散イニシアティブ」NPDI広島宣言の具体化をはじめ、核軍縮・不拡散体制の維持強化に向けて国際社会の先頭に立って取り組んでいく考えであります。原爆症認定制度について、田村大臣からもご説明をいたしましたが、平成19年に総理大臣として認定審査の見直しを指示をいたしました。平成20年には新しい審査の方針が策定され、認定基準は大幅に拡大をいたしました。また、被爆者の代表の方々にもご参加をいただいて、3年に及ぶ精力的なご議論を経て、昨年末には5年ぶりに認定基準の大幅な見直しをおこないました。これによって心筋梗塞などの、いわゆる非ガン疾患の申請件数は見直し前の約5倍と大幅に増加をしております。原爆症の認定制度の在り方については様々なご意見があるということは承知をしておりますが、まずは新たに対象となる方々に1日も早く認定がなされるよう、取り組んでいく考えであります。
さらに、被爆者の方々がご高齢となり、お体が不自由な方も増えています。このため、この秋からご家庭を訪問をして申請手続き等の相談・支援に応じる事業を開始をする考えであります。また、あの、この要望書の中にございます、エネルギー政策、そして原発についてでございますが、太陽、風力そして地熱エネルギーなどの自然エネルギーの振興は安倍内閣として大いに力を入れていく考えです。電力市場の自由化も進めています。それに伴って自然エネルギー、地産地消エネルギー源の活用を大いに進めていく考えでございます。
原発については、何よりも安全再優先で考えています。再稼働についてはあの福島の事故を踏まえ、科学的・技術的観点から原子力規制委員会が審査をおこない、この原子力規制委員会は独立した委員会でございまして、これに適合すると認められない限り再稼働はさせません。地元のご理解、ご協力を頂きながら、厳格に考えていく方針です。いずれにせよ、原発の依存度については可能な限り低減させていく考えであります。そして福島第一原発事故については、事故の原因究明を進め、除染、汚染水の処理など、事故収束に向けて政府をあげて取り組んでいきます。福島県が全県民を対象におこなっている健康管理調査を今後もしっかりと支援をし、福島第一の作業従業員についても引き続き適切な健康診断を受けられるようにしていく考えであります。また、集団的自衛権についてでございますが、岸副大臣からもお答えをさせていただきましたが、私は就任以来、いかなる紛争についても力ではなく国際法に基づいて平和的に解決をしていくべきである、という考え方について述べてきているわけでありまして、就任以来、法の支配の重要性を国際社会に対し繰り返し訴えてきたところでありまして、これこそがまさに大前提と言えるところでございまして、先般のシャングリラでおこなわれました会合におきましては、まず主張すべきは国際法に則って主張するべきであり、そして課題があればですね、これは平和的に、そして国際法に則って解決をするべきであると、武力あるいは力による現状変更の試みはしてはならないという三原則をですね、しっかりと各国が守るべきだということを提言したところでございます。今まで200回以上首脳会談をおこなっておりますが、その際には必ずこうした原則について各国が守っていくべきであると、こう申し上げているところでありまして、この原則がしっかりと実行されればですね、間違いなく、これは戦争の無い世界が実現していくと、こう私は確信をしているところでございまして、外交的手段、あるいは各国と協力しながら進めていく考えでございます。
そしてまた、北東アジアの情勢についてお話がございました。中国についても韓国についてもそうでありますが、様々な課題、隣国同士は様々な課題をもつことが多いわけでありますが、課題があるからこそですね、対話をし、そして対話によって解決をしていくべきだというのが、私の主張であり、常に対話のドアは開いていかなければならない、日本は対話のドアは常にオープンであるということを申し上げておりまして、中国側にも韓国側にも同じ姿勢をとっていただきたいと、こう思っているところでございます。
そして北朝鮮につきましては、まさに核問題、そしてミサイル問題、こうした課題については国連決議がございまして、この国連決議に則ってですね、北朝鮮がまさにこの核開発あるいはミサイル開発を進めていくことを阻止をしなければならないと、こう考えておりまして、その中で我々は国際社会と協調しているところでございます。他方、我が国と北朝鮮との間には拉致問題がございます。多くの無辜の民が北朝鮮によって拉致をされたわけでございまして、この問題を解決をするために外交交渉を重ねてきた結果ですね、北朝鮮側が全面的、包括的に調査をするという約束をしたところでございまして、北朝鮮が誠実にこの問題に向き合い、解決していくことについて、我々も今後とも要求し続けていきたいと、こう思っているところでございます。こうした外交努力を積み重ねながら、様々な課題、問題を解決をしていく、これが基本的な姿勢であるということは申し上げておきたいと、こう思うところでございます。その中におきまして、我が国をとりまく安全保障環境が厳しさを増しているのは事実でございます。こうした外交努力が大前提でございますが、その上においてですね、我々は国民の命、そして幸せな生活を守り抜いていくという責任があるわけでございまして、我が国の憲法の範囲内におけるですね、許される自衛権の中において我々は何をなすべきか、という考え方からですね、先般閣議決定をおこなったところでございます。繰り返しになるわけでありますが、イラク戦争とかあるいはアフガン戦争、また湾岸戦争のような戦闘を、武力行使を目的とした戦闘行為には参加しないということはもう既に繰り返し国会で申し上げている通りでありまして、まさに我が国の国家としての存立が脅かされ、国民の命あるいは幸福追求をするという権利、この基本的な権利が根底から覆される明白な危険が無い限りですね、限定的かつ、限定的な行使にとどまるわけでありますが、我々は集団的自衛権として国民を守る為の行使はおこなわないということになるわけでございまして、まさにこのような考え方は憲法の今までの規範とは変わりがないというのが政府としての考え方であります。いずれにいたしましても、平和国家としての歩みは寸分も変わらないわけであります。その中でしっかりと切れ目の無い安全保障の仕組みを作り、法制を整備することによってですね、結果として抑止力が効き、そして結果として国民の命と地域の平和は守られていくと、このように私は確信しているところでございます。今後とも国民の皆様からご理解を得ることができるように努力を重ねていきたいと、こう思う次第でございます。
今後ともですね、今日皆様からいただきましたお話、言葉をですね、しっかりと胸に刻み付けていくとともに、核廃絶に向けて努力を重ねていきたい。そしてまた、被爆者の方々に対する援護策をですね、誠心誠意進めてまいりますことをお約束をいたしまして、結びの言葉とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
終了後安倍首相は被爆者代表の方々と握手をしていきます。川野氏と握手した際、
川野氏「○○(集団自衛権?)の話は私は納得していませんから、是非。。」
安倍総理「見解の相違ですね。」
川野氏「見解の。。」
という会話をしているのが動画から見て取れます。その後、一部では報道もされましたね。
出典:政府インターネットテレビ(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg10281.html)から私が文字起こし
(私の感想)
まぁ、自分が"確信"していることについては他人の意見など全く聞く気はないし、説明する気もないというのがよくわかります。
極めつけは「見解の相違」という言葉ですが。。
ところで集団的自衛権について語る部分の意味が分かる人はいるんでしょうか?
「我々は集団的自衛権として国民を守る為の行使はおこなわないということになるわけでございまして」
何度か動画を見直したのですが、このように言っているのは間違いないと思います。
何を言いたいのかもはっきりしません。
丁寧に説明する気など毛頭ないというのがここからも見て取れます。
■記者会見
その後の記者会見です。
NCCオオシマ氏
「平和宣言の中で集団的自衛権の行使容認を巡る問題について長崎の不安や懸念が示されました。また被爆者5団体も、日本が戦争を出来る国になる、憲法解釈を内閣の判断で変えるのはおかしい、などと反対の意見書を総理官邸に送っています。マスコミの世論調査でも閣議決定に反対の意見が半数を越え、慎重な声が相次いでいますが、被爆地長崎の声をどのように尊重しようと考えてらっしゃいますでしょうか?国民の不安を取り除く説明の場が必要ではないでしょうか?」
二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、69年前の今日この長崎で起きた惨事は二度とあってはならない、今日式典に参列をいたしまして改めてその思いを強くしたところであります。その中におきまして、国民の命を守り抜き、国民の平和な暮らしを守るために何をすべきか、を我々は考え、そして考え抜いた中において、先般閣議決定をおこなったところであります。まずはいかなる紛争も力ではなく、法に基づき外交的に解決をすべきである、この基本的な考え方についてシャングリラ会合、シンガポールで開催されたシャングリラ会合で述べたところであります。三原則として述べたことでございますが、意見を言うときには法に則って、国際法に則って国は発言しなければならない、武力や力による現状変更の試みは許してはならない、そして何事も、問題が発生した場合はですね、平和的にそして国際法に則って解決すべきである、これを私は日本として三原則として世界に向けて発表したところであり、そして多くの国々から賛同の拍手をその場でいただいたところであります。こうした外交的な努力、国際的な協力を進めていくことによってですね、世界は、地域はより平和と安定した地域になっていくということだろうと思います。
その上においてですね、その上において、万が一に備えていくことも我々の大切な責任、重要な責任であります。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している、もはやどの国も一国のみで平和を守ることはできません。それは事実であります。もちろん理想的にはですね、国連憲章が理想として掲げた国連軍によって全ての問題が解決されることが望ましいのでありますが、国連軍自体、実現の目処がたっていないのが世界の現実であります。このような中、国民の命と暮らしを守り抜く為にはあらゆる事態に対して切れ目の無い対応を可能とする国内法制を整備し、万全の備えをしなければなりません。こうした備えをすること自体が万が一の事態を防ぐ大きな力となります。すなわちそれが抑止力であり、これによって日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていくと考えています。抑止力については1960年、安保条約を改定した際にも議論があったわけでありますが、そのときもこの改定によって日本は戦争に巻き込まれる、という議論がなされました。あのときも議論が、議論の進め方が急ぎすぎるという批判がありました。しかしあの機会を逃せば安保条約の改定もできなかったのであります。あのときの反対論の主流は巻き込まれ論だったんだと思います。しかし今、多くの方々があのときの安保改定、日米条約を支持をしているわけでございますし、先般、オバマ大統領が4月に来日をして、尖閣を含む全ての日本の施政権下にある地域は安保条約第5条の適用対象であるということを、発言があり、これは抑止力となるという国民の皆様の7割以上の評価をいただいたわけでありますが、あの安保改定がなければ、この5条もなかったわけであります。まぁつまりあの時の議論と、まさに今、同じ議論となっているのではないか、というのが私の受け止めでございまして、しっかりと我々が丁寧に分かりやすく説明の努力を続けることによってですね、必ずご理解をいただける、そして歴史の検証に耐えうると、こう自信を持っているところであります。
また、もとより海外派兵は一般には許されないという従来からの原則は全く変わりがないわけでありまして、自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後も決して無いわけであります。また今回の閣議決定がですね、徴兵制につながるという根拠の無い、風評を与えるような、そういう議論がなされているわけでありますが、そもそも徴兵制については憲法違反であるということは明確であり、これは私が累次国会でも述べてきているところでございます。そして平和国家としての我が国の歩みはこれからも決して変わることが無いわけでありまして、今後この歩みをさらに強いものにしていくことが、この今回の閣議決定であると、こう思っておるところでございます。政府としては今後、個別法を提出をしていくことになるわけでありまして、その際もしっかりと国会において議論をおこなっていきたいと考えています。
次にフジテレビのツヤマ氏が内閣改造などについて質問して終了しました。
出典:政府インターネットテレビ(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg10281.html)から私が文字起こし
(私の感想)
広島のときと同様、記者の質問には答えていません
質問は「長崎の声をどう尊重させる?」「国民に説明する場が必要なのでは?」です。
それに対して、聞かれてもいないことも含めていつもの回答。
それと60年の安保改定と同じ議論だというメチャクチャなことを言っています。
「戦争に巻き込まれる」という結論は同じかもしれませんが、そこに至る論理は安保改定と集団的自衛権行使とでは全く異なると思います。
安保改定ではまさに安保条約第5条の
「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従つて共通の危険に対処するように行動する」
という日米共同防衛の考え方が元となるのでしょう(その時代の資料を見たわけではないので違うかもしれませんが。。)
集団的自衛権行使の場合は、自国が攻撃されていないのに他国の戦闘に参加すれば、その瞬間からその戦争に巻き込まれるという論理です。
うまい例えが浮かびませんが、例えば。。
江戸時代に
A:自分の家に浪人が住んでいて、自分に危害が加わりそうだったらその浪人が自分を守ってくれる代わりに、浪人の住む部屋(=自分の家)に誰か侵入してきたら一緒にその相手を捕まえる。という約束をする
B:友人である浪人が外で喧嘩をはじめたら、自分もそれを助太刀しにいく。という約束をする
この2つの約束のいずれでも「そんな約束したら喧嘩に巻き込まれるかもしれない」という同じ危惧が抱かれたとします。
Aの約束に対する危惧は、自分には関係ない(でも浪人には恨みがある)人間が侵入してくれば、その争いに巻き込まれるかもしれないという恐れであり
Bの約束に対する危惧は、何もしなければ巻き込まれないのにわざわざ喧嘩に巻き込まれに行くようなものだし、
浪人に非があるかもしれない状況で一方の側に立てば、喧嘩の仲裁すら出来なくなってしまうという恐れです。
ところが、安倍首相に言わせると、
それは10年前と同じ心配をしているだけ。
10年前にAの約束をして、一度も喧嘩に巻き込まれたことがないんだからBの約束したって大丈夫だろ?
と言っているかのような。。。
「AとBとは心配の内容が全然違うでしょう?」という
まぁ、とにかくひどい理屈です。
新規作成:2014/08/16
最終更新:2014/08/16